カジノとパチンコの論理学 民主党 遊技業に関する法律案2 原案の内容と予測される効果

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民主党 遊技業に関する法律案2 原案の内容と予測される効果

民主党の「娯楽産業健全育成研究会」(娯楽研)「新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチーム」(娯楽PT)はパチンコ業界の換金合法化など規制緩和に向けて取り組んでいる団体です。
(詳しくはこちら 娯楽研のメンバーと目的
前回の記事で娯楽研が2010年6月に「遊技業に関する法律案」(パチンコ法案・遊技業法案)をまとめ、業界団体への開示、意見の聴取を開始したことについて取り上げました。
(詳しくはこちら 原案の概要とその背景

今回はこのパチンコ法案についての内容と、予想される法案の効果について論じていきます。


「遊技業に関する法律案」の目的

「遊技業に関する法律案」は現在の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)からパチンコ店に関連する条文を抜き出して、規制緩和の方向へ変更を加えた内容となっています。
条文では第一条に法律の目的を定め、その中でパチンコ産業の振興を謳っています。

娯楽産業健全育成研究会「遊技業に関する法律案」第一条の冒頭部分(引用)

国民の健全な余暇生活を向上させるためには、国民的な大衆娯楽を有効活用することが必要であるところ、ぱちんこ遊技が国民的な大衆娯楽の一翼を担っており、遊技業が地域における経済の活性化及び就業機会の拡大をもたらし、並びに遊技機の開発をとおしてICT技術の振興に多大な役割を果たしていることにかんがみ、その振興を図る


風営法では、清浄な生活環境や青少年の健全な育成の為に風俗営業を規制することを目的として、産業振興の文言はありません。
今回の娯楽研の法案で、この趣旨が大きく転換したことが分かります。


「遊技業に関する法律案」の要点

遊技業に関する法律案の要点は以下のとおりです。

「遊技業に関する法律案」の要点(2010年9月現在・筆者まとめ)

・現在の風営法の規定からパチンコ店関連の条文を抜き出し、一部の規制を緩和する
・パチンコ店を「遊技場営業」、メーカー・販社等の関連業種を「遊技関連営業」とする
・遊技場関連営業については主務官庁を経済産業省とし、パチンコ産業の育成を図る
・保安電子通信技術協会(保通協)の試験業務は経済産業省傘下の法人に移管する
・パチンコ店内の換金合法化については今回は見送り、今後の課題とする方向
・パチンコ税の創設は無し、各種社会問題の対策については調査研究のみ

※現時点の「遊技条に関する法律案」は中間報告という位置づけで、パチンコ業界団体との協議を通じて変更される可能性も十分ある

05年にまとめた「遊技場営業の規制及び業務の適正化等に関する法律案」と比べると、今回の法案はパチンコ店内での換金についての条文を見送るなど、一見おとなしい文面に見えます。
(05年の法案について詳しくはこちら 05年のパチンコ法案の内容


「遊技業に関する法律案」の効果

この法案の成立によって、以下の効果が期待されます。

「遊技業に関する法律案」成立後の期待される効果(2010年9月現在・筆者まとめ)

・風営法からの脱却、賭博ではない遊技としてパチンコ業界のイメージを向上させる
・管轄を警察庁から経済産業省に移し遊技機の賭博性規制を緩和させる
・更なる規制緩和を視野に入れ法律改正手続きを簡素化する
・将来の換金合法化、或いは現状の三店方式の政府公認へ道筋をつける
・パチンコホールの上場達成へ向けて環境を整備する
・カジノ合法化の進展に伴う賭博規制強化論が起こる前の決着を図る


それでは、法案の効果について詳しく見てみましょう。

第一に、風営法から抜き出して新たな法律を作ることで法律上風俗産業から脱却させ、さらに賭博ではなく遊技と明確に位置付けることでパチンコ業界に対するイメージの向上を狙っています。
風俗という用語は法律上は性風俗産業のほか酒類を提供して接待する業種や、ゲームセンター、麻雀店等の遊技施設も内包する概念で、風営法の管轄もこれと同様となっています。
そのためパチンコ営業も遊技の一種という位置付けであれば法律上は風俗に含まれることが妥当ですが、パチンコ業界では風俗という言葉が近年では性風俗産業をイメージさせるということで倦厭してきた経緯があります。
また、他の風俗営業でも脱税や暴力沙汰の犯罪などが報道がされることがあり、パチンコ業界のイメージ悪化を増幅させている為これらと一線を画す狙いもあります。
さらに、パチンコ業界側の論理として賭博との対の概念として遊技という言葉を用いる、つまりパチンコは遊技であるため賭博ではないという主張が多く有り、娯楽研幹部の過去の発言にも多々見られます。
今回の遊技業法案の名称に遊技という言葉を用いたことは、パチンコが賭博ではないとの民主党の姿勢を国会の定める法律に反映させる狙いがあり、賭博ではないという土台により次項以降の規制緩和・産業育成といった議論につながっていきます。

第二に、パチンコ・パチスロメーカーの監督権限を警察庁から経済産業省に移管することで、遊技機の賭博性についての規制を弱めることが出来ます。
犯罪の防止などを主眼に規制中心の監督行政を行う警察庁に対して経済産業省は産業の育成を主眼としているため、主務官庁を経産省に移すことで行政の役割が規制中心から産業育成へ転換し大幅な規制緩和への土台が固まります。
パチンコ・パチスロ機の指定試験機関を警察庁の影響力の強い「保安電子通信技術協会」(保通協)から経産省傘下の団体に移すという構想は、賭博性についての遊技機規制を骨抜きにする効果を期待したものです。
また、メーカーの監督官庁を経産省に移管することを皮切りに、今後パチンコホールそのものについても警察庁から経産省へ移管する方向へ誘導する効果も期待できます。
その場合は、パチンコ行政全般への規制緩和となるでしょう。

第三に、法律改正手続きについて簡素化が期待できます。
風営法の改正では保安警察機能についての重要な法律であることなどの理由で、法律学者などが名を連ねる審議会の答申を元に警察庁で法律案が作成されパブリックコメントを経て、国家公安委員会の了承を踏まえてから国会に法案が提示されるという様に、改正にあたっては慎重な検討がなされる手続きとなっています。
これは、風営法の規定は単に一本の法律という役割の他に道徳などの社会規範を反映する役割をも担っているという一面もあり、社会規範も風営法の影響を受けるため相関関係にあります。
一国の道徳が朝令暮改で変わることがないのと同様に、社会規範の役割を持つ法律の改正にあたっては本来は多くの議論が必要とされます。
風営法から脱却し新たなパチンコ法案が制定されると、これは単にパチンコ業界についての法律という位置付けとなり、政治家や中央省庁が作成した改正案が一気に国会で可決されるなど後の規制緩和などの法改正が容易になる可能性があります。

第四に、上記の第二項・第三項から得られる効果として、将来のパチンコ換金合法化への足場を築くことになります。
現状、警察庁においては換金の合法化は各種社会問題の解決がなされた後との立場を取ち見通しが立っていないため、経済産業省の監督下で換金合法化を進めさせる狙いがあります。
また、一気に換金合法化を謳った法案を打ちださずに、ステップを一つ増やすことで国民世論へのインパクトを減らし批判を分散させる効果もあります。
換金合法化が達成できれば産業基盤が盤石なものとなり、業界が世論の批判や行政の動向に対して過敏に対処する必要がなくなります。
また、今回の法案には換金の合法化が明記されない見通しですが、国会におけるパチンコ法案の議論の中で、自民党政権時代からの姿勢を転換して政府として現状の三店方式について公認を明言する可能性もあります。

第五に、上述の全ての項目の効果として、パチンコホールの株式公開を実現させる状況を整備する狙いがあります。
パチンコホールの新規出店では多くの資金が必要となりますが、株式公開が認められていないことが障害となり資金面で問題を抱える企業が多くあります。
民主党の娯楽研と特に親密な関係を保っているパチンコ業界団体のPCSA(パチンコ・チェーンストア協会)の一番の目的は会員企業の規模の拡大、そのための上場を達成させることにあります。
警察庁による賭博規制や換金法案の未整備などはこの上場を阻んでいる大きな要因であるため、パチンコチェーン大手の企業は業界の抱える社会問題に注目が集まる危険を冒しても上場の達成の為に規制緩和や換金合法化などに取り組んでいます。
法案の議論を通じて、あるいはそれと並行して別の方法で、政府与党として証券取引所に対してパチンコホールの上場を認めるよう何らかの圧力を加える可能性も高いでしょう。

第六に、カジノ合法化後の世論対策として、予想されるパチンコ業界への規制の是非に対して先手を打って緩和の方針を打ち出す狙いがあります。
カジノの解禁については2010年9月現在、超党派議連の元で法案の骨子がまとまり関係各所からパブリックコメントを受け付けている状況にあります。
現在までの議論ではカジノの規制は参加企業に対して新たな税金を課し、不正改造や脱税を排除する目的で監督省庁がオンラインで賭博機を監視し、依存症についても多額の費用負担を求めるなど、現在のパチンコ規制とは正反対に非常に厳しい制度設計がなされています。
パチンコ法案では防犯協会を想定して外部に営業データを提供させ分析・調査・研究を行うと定めていますが、人員の増加や予算などは一切規定しておらず、監督・取締権限をさらに分散させるのみで有効な対策とは言えません。
そのためカジノの法制度が一般に周知された後のパチンコ法案提出では、脱税・不正・依存症を抱えたままのパチンコ業界への更なる規制緩和に対して世論の反発を受ける可能性が高く、さらに動向によっては規制強化やパチンコ税創出などを求める声が主流になる可能性もあります。
しかし、国会の情勢は先の参院選で民主党が惨敗した影響で予算など重要法案でも成立が危ぶまれるなど、パチンコ法案の成立で強硬策を用いる余裕はありません。
パチンコ業界を重視する民主党娯楽研としては、カジノ法案と同時にパチンコ法案を提出して、カジノに大衆の注目が集まっている間にパチンコの規制緩和の足場を固めておく必要があるのです。


次回は、パチンコ業界団体の反応の見通しと、法案の今後の進捗を予測します。
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ジャンル : 政治・経済

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