カジノとパチンコの論理学 2011年11月

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若宮健氏「カジノ解禁が日本を亡ぼす」の書評

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR法案・カジノ法案)の提出が、いよいよ間近に迫ってきました。
「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連・超党派カジノ議連)は、2011年の10月召集の臨時国会、もしくは2012年の通常国会冒頭でのIR法案提出を視野に調整を続けています。

法案についての詳細は別の記事に譲るとして、今回はブログ管理人・場口重が著作権侵害を受けた若宮健氏による新刊「カジノ解禁が日本を滅ぼす」(祥伝社新書)について、内容に非常に多くの間違いがあるため、著作権侵害の経緯を改めて述べたうえで書評をしていきます。


パチンコ業界から批判を受ける若宮氏

若宮健氏はパチンコの問題を扱うジャーナリストの方で、2010年12月に「なぜ、韓国はパチンコを全廃できたのか」(祥伝社新書)を出版し、世論のパチンコ問題へ関心の高さから注目を集め、ベストセラーとなりました。
しかし一方で、この本には日本国内のパチンコ業界の現状について明らかな間違いが数多く見受けられました。

そのため、パチンコ業界内で活躍されているコラムニストのPOKKA吉田氏が、2011年8月に出版した「石原慎太郎はなぜパチンコ業界を嫌うのか」(主婦の友新書)の中で正誤表を載せるなど、業界内外から批判を受けています。
パチンコ業界内から挙がっている声としては、概ね「批判するなら、正しい情報に基づいて批判してほしい」というものです。
場口の見る限りでは、若宮氏は2011年11月現在までに、これらの批判に対して明確な反論をしていないようです。

若宮氏はこの新書の中で、「パチンコチェーンストア協会政治分野アドバイザー」に名を連ねている議員を「パチンコ族議員」と批判しています。
これについて場口から、「議員連盟としての活動が認められない」「参加している議員の中にはパチンコ業界に厳しい発言を重ねている議員がいる」という事実を若宮氏側に示し、無責任な批判は控えるよう苦言を呈しました。
しかし、その後も若宮氏は自身のホームページや、講演の席などで批判を続けているようです。


新刊「カジノ解禁が日本を亡ぼす」の間違い(第一章の内容のみ)

・国会議員が仙台にカジノを作らせようとしている(16ページ)
⇒カジノ法案のスキームは国が特定の地域を想定するものではなく、地元の立候補が前提となる。
 「仙台カジノ構想」では、空港に隣接する名取市北釜地区の住民が結成した
 「名取市東部震災復興の会」が中心的な役割を担っている。

・仙台カジノ構想について、宮城県庁、仙台市役所、仙台商工会議所に取材して
 地元からの要望は無いと断言。(17ページ)
⇒構想の予定地は「仙台空港」周辺地区で、地元自治体は名取市。
 名取市の佐々木一十郎市長は、仙台カジノ構想のシンポジウムで挨拶に立つなど協力的な姿勢。

・IR議連への取材とし、問い合わせ先の牧義夫衆議院議員の秘書を「藤高氏」と記載。(20ページ)
⇒「藤鷹氏」の間違い。

・仙台カジノ構想の誘致の動きは震災前の話。震災後は誘致の動きは全くない。(22ページ)
⇒「名取市東部震災復興の会」は2011年6月26日、名取市内でシンポジウムを開催。
 その後も、名取市議会に請願書を提出したほか、宮城県知事にも協力を要請。
 9月29日には約30名の国会議員と面会して陳情書を手渡し、カジノ合法化の実現を要請している。

・カジノ法案を「カジノ区域整備推進法案」と記載。(23ページ)
⇒正しくは、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」

・IR議連の動きにパチンコの換金合法化がリンクしている。(30ページ)
⇒2010年4月、議連初回の総会後の記者会見で古賀会長らが明確に否定した。
 換金合法化は議連とは別の「娯楽産業健全育成研究会」の動きがあったが、
 2011年からは11月現在まで活動が停滞しており、主だった動きはみられない。

※細かい間違い、長い説明が必要な間違いなどは省略。

若宮氏は新たに2011年11月「カジノ解禁が日本を亡ぼす」(祥伝社新書)を出版し、今度はカジノ合法化の動きを批判しています。
場口が一度目を通して気が付いた範囲のうち、第一章に掲載されているもののみではありますが、この新書の明らかな間違いを指摘すると、以上のようになります。

若宮氏は今回の著書の中でカジノ推進派の方々に対して、「あまりにも知らなさすぎる」(40ページ)、「正気なのかとわが目を疑った」(16ページ)といった批判をされていますが、まずは自分の胸に手を当てて、考え直した方が良いでしょう。


明記されていない図表の参照元

・「カジノ誘致に向けた主な地方自治体の動向」の表(29ページ)
沖縄県「平成22年度カジノ・エンターテイメント検討事業報告書
 http://www3.pref.okinawa.jp/site/contents/attach/25029/h22_houkokusho.pdf(PDFファイル)
 の13ページ(PDFとしては16ページ)の表。内容が酷似。

・「マカオ、ラスベガスのカジノ収入の推移」の表(61ページ)
⇒同上・沖縄県報告書の15ページ(PDF18ページ)の表を加工したものの可能性がある。

・「ヨーロッパのカジノ(2008年)」の表(63ページ)
⇒同上・沖縄県報告書の15ページ(PDF18ページ)の表を加工したものの可能性がある。

・「韓国カジノ企業の現況」の表(47ページ)
Invest KOREA(大韓貿易投資振興公社)「観光レジャー」
 http://www.investkorea.org/InvestKoreaWar/data/bbs/20110302/TourismandLeisure_jpn_0228.pdf(PDFファイル)
 10ページの表。内容が酷似。

※すべて、為替レートによる変更が加えられている。

若宮氏の新刊のページをめくると、参照元が明記されていないもので、いくつか見覚えのある図表が出てきました。
これらは著作権法違反の可能性があります。

前述のとおり、私自身も前の著作で著作権侵害を受けて迷惑を被りましたが、読者の方が誤解したり、著作権者の方から盗用と非難されたりするおそれもあるため、必要な場合は参照元をきちんと明示された方が良いでしょう。
沖縄県は仲井眞弘多知事をはじめとして、カジノ誘致にもっとも力を注いでいる自治体の一つなので、もし著作権侵害が事実であれば、また抗議が入るかもしれません。


場口の私見

若宮氏は著書によると、ご自身の大切な友人をパチンコ依存症による自殺で亡くされたことをきっかけに、パチンコの社会問題などの取材を始めたそうです。
場口もその心境は推察できるのですが、きちんとした知識を持たず、間違った情報で批判することはジャーナリストとしてはどうなのでしょうか。

私見としては、残念ながら若宮氏のカジノやパチンコの動きを読み解く力が低いのだと捉えています。
実際、新書などで事実として記載されている内容はインターネットで入手できる情報がほとんどで、取材にも誤解が多くみられます。
今回の新刊では、表紙の帯などに「結局得をするのは、闇社会と政治家」といった文言が盛られていましたが、場口からの抗議も多少影響あったのか、本文では具体的な記述がなされていませんでした。
論拠に自信がない裏返しなのでしょうか、政治不信といった世論の風潮にカジノやパチンコを強引に当てはめ、陰謀論を展開して読者の不安を煽るという姿勢が多く見られますが、これも改めた方がいいと思います。

今回の新刊では取材として被災地の自治体を訪問していますが、下調べを怠り、震災対応に追われる担当者の貴重な時間をいたずらに浪費させる手法は、間接的に被災者の方々に対しても迷惑をかけていることになります。
場口は「若宮氏の著作とPOKKA吉田氏のものと、どちらが優れているか」と問われれば迷わず吉田氏の名前を挙げますし、若宮氏の主張と比べるとパチンコ業界からの「正しい情報で批判して」という主張の方が共感できます。

カジノ合法化賛成派の場口としては、賛成・反対双方による論戦は制度設計においても、とても有益で歓迎すべきことであると考えています。
しかし、若宮氏にはまず間違いだらけの情報を元に批判を重ね、読者を惑わすというご自身の論調を改めてから、議論に参加してもらいたいと思います。

なお、以上の文面は2011年11月2日に、若宮氏のメールアドレス宛に送信してあります。
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テーマ : カジノとパチンコ
ジャンル : 政治・経済

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