カジノとパチンコの論理学 パチンコの換金問題

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パチンコの換金1 法律の規定

現在、カジノの立法化作業が国会議員の間で進められています。
これについては今後の記事で詳述しますが、カジノの合法化によってパチンコの換金問題が注目される可能性が高く、パチンコ産業の中で危機感が高まっています。

このブログの始めのテーマとして、パチンコの換金問題を取り上げます。

日本国内ではギャンブルは刑法185条によって禁止されています。

刑法第185条 
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。
ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。


刑法185によってギャンブルが禁止されていますが、公営ギャンブルが全国に設置されています。
これは、刑法35条が法令で許可された行為を罰しないとしているためで、公営ギャンブルには競馬法などの個別の法律(特別法)が制定されているため罰せられません。
さらに、公営ギャンブルや宝くじの特別法の規定には、賞金を出すことを許可する条文が含まれています。


さて、パチンコ産業はどうなっているのでしょうか。

パチンコは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)によって、風俗営業の一業種として規制されています。
この中で換金に関しては、23条に規定されています。

風営法23条1項 
第二条第一項七号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、次に揚げる行為をしてはならない。
 一 現金又は有価証券を賞品として提供すること。
 二 客に提供した賞品を買い取ること。


この条文を見ると、パチンコでは賞金を受け取ることは出来ないように見えますが…。
パチンコでは換金をともなう「三店方式」によって、賞金が提供されています。


次回の記事では、この三店方式について論じます。
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パチンコの換金2 三店方式

前回の記事では法律上パチンコ店は賞金を提供してはならない、という話をしました。

パチンコはギャンブルではないので客に賞金を出すことは出来ませんが、出玉(獲得した玉)の数に応じて賞品を提供することは認められています。
これは、昔のパチンコが子供相手の射的と同様であったためであり、祭りの出店を起源としているためです。
しかし、現在では子供の入店が禁止された大人向けの娯楽となっており、おおよそ95%の客が「三店方式」を利用した換金を経て、賞金を手にしています。

三店方式について簡単に説明します。

客がパチンコで大当たりを当てると出玉を賞品と交換することが出来ますが、賞品の種類の中には換金が可能な「特殊景品」がどの店にも必ず置いてあります。
特殊景品はパチンコ店と隣接して設置されている「景品交換所」(古物商)にて一定の金額で売却することが可能であり、換金が広く行われるようになりました。

三店方式による換金では、パチンコ店とは経営者が異なる景品交換所が現金の提供をしています。
そのためパチンコ店の主張では、昨日の記事で触れた賞金の提供を禁止した風適法23条の条文では違法とならないとしています。

しかし、業界外部からはパチンコの換金の違法性を「極めてグレーに近い」と問題視する声が上がっています。
換金ができるということは景品交換所に行く必要はありますが、実質的には賞金の提供と大差がないためです。
ここ数年では、カジノの合法化の議論が高まってきており、カジノ賛成派の中でも取り上げられ注目が集まっています。

このように、問題視されている換金が現在でも行われているのは、警察が取り締まりをしないからです。
次回の記事では、警察の立場について解説していきます。

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パチンコの換金3 警察の取締り

前回までの記事においてパチンコはギャンブルではないため賞金を提供できないこと、そのため三店方式という方法によって換金をしており、問題になっていることを述べました。

今回はパチンコ店の所管官庁となっている警察庁と、都道府県警の立場について述べていきます。

パチンコ店は風俗営業であるため、都道府県警の指導の下で営業が許可されています。
通常、一つの産業には監督官庁と取締りの省庁(警察庁)の二つが関わりますが、パチンコ店では警察庁が監督官庁を兼ねているため、一つの省庁しか関わりません。
そのため、警察庁は幅広い法律解釈によって柔軟な指導ができ、さらにパチンコ店に対して圧力をかけたり、恣意的な法律解釈を用いることも可能となっています。

戦後まもなく、ギャンブル性の高い「連発式」のパチンコ台の普及によって、パチンコ店が賞品を買い取る「自家買い」が横行しました。
これに対して警察の摘発が相次いだために、「買人」が路上で客から煙草を買い取るようになりました。
しかし、「買人」には暴力団が介入する例が多く、パチンコ店からも暴力団へみかじめ料が払われるようになり、さらにはこれらをめぐって暴力団同士の抗争も起こるなど社会問題化しつつありました。

これを打開する策として、1961年に大阪府のパチンコ店の組合である「大阪府遊技業協同組合」が現在の三店方式の起源となる「大阪方式」を考案、府内で普及させました。
この「大阪方式」は三店方式の換金業務を「大阪身障者未亡人福祉協会」に委託することで社会的弱者に職場を提供するなど社会貢献に寄与し、暴力団の排除にも効果的でした。
これに対して警察庁は違法の認識で大阪府警に取締るよう要請しましたが、当時の風営法は条例に多くが移管されており、警察庁が都道府県警に強制することは困難であり、大阪府警は社会貢献等を評価して黙認しました。

その後、他の都道府県においてもなし崩し的に三店方式が導入されましたが、それらは換金を目的としており福祉団体に委託する例はほとんど見られませんでした。
三店方式の普及については取締る都道府県警はほとんど無く、暴力団排除のために積極的に三店方式を推進する地域もありました。
そのため、次第に警察庁も三店方式を黙認するようになり、法律上では賞品の提供が禁止されているのに行政解釈で換金が認められるという矛盾が生じるようになりました。

この矛盾を解消するための動きが1990年代に起こります。
次回は、1990年代以降の換金合法化の動きについて述べていきます。

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パチンコの換金4 合法化の動き

前回までにパチンコの換金について、警察庁の法律解釈に基づいて行われているが、解釈と法令に矛盾が生じていると述べてきました。

今回は、この矛盾を解消するために取り組まれた、1990年代以降の換金合法化の動きについてその概略を述べていきます。
この動きの中には示唆に富むものが多いので、いずれ機会がありましたら詳細に見ていきたいと思います。

90年代になりますと業界の市場規模が拡大し、パチンコ店の中には上場を視野に入れた大規模なチェーン店も現れ、法律的にグレーである三店方式を見直そうとする動きが活発になりました。
警察庁も三店方式を解消するために、風営法の改正を視野に入れた諮問委員会を発足させ、三店方式を追認するべきとの答申を得ました。
(国民生活の安全を守るための施策を研究する会(生活安全研究会)「ぱちんこ営業の在り方について」)
また、国会議員の中でもこの問題に取り組む人々が現れ、風営法の改正に取り組むもののほか、公営ギャンブルと同じように特別法を制定するべきだとの主張もなされました。

しかし、当時ようやく普及したプリペイドカードの不正が深刻になり、また、パチンコ依存症がマスコミに取り上げられるなど批判が相次いだため、換金合法化の流れは一度途絶ました。

最近では、民主党内部に設置されている「娯楽産業健全育成研究会」(娯楽研・古賀一成会長)が大手パチンコチェーン店の組織と協力して、再び換金合法化に取り組んでいます。
しかし、大企業とは対照的にパチンコ店の中小企業には合法化するよりも現状のほうが良いとする意見が多く、パチンコホール企業全体の支持を受けられないでいます。

次回は、換金問題について現状の維持を望む人々について述べていきます

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パチンコの換金5 現状の維持

前回は法律改正によって、三店方式を合法化する動きを見てきました。
しかし、多くの団体が取り組んできましたが、現時点ではいずれも達成には至ってません。
これは、合法化が難しいことに加えて、業界内部でも現状維持が最善と考える人が多いためです。
今回は合法化の問題点について扱います。


パチンコの換金が合法化されるとどうなるのでしょうか。

パチンコの客は現在のように景品交換所まで足を運ぶ必要が無くなり、パチンコ店の売上も上昇するとの見方があります。

しかし、合法化されれば現状のような警察の黙認とは意味が全く異なり、換金が公に認められるということになります。
それは、賞金の提供が認められることと大差なく、パチンコが正式にギャンブルとなることを意味します。
過去の合法化の動きの中には、景品交換所を廃止してパチンコ店内で賞金を提供することを目指したものもあり、これなどは公営ギャンブルと全く変わらないものと言うことができます。


パチンコが正式にギャンブルとされたらどうなるのでしょうか。

日本国内ではギャンブルが一般に禁止されています。
現在ある公営ギャンブルは特別法制定によって公的機関にのみ設置が許可され、収益は所定の公共目的に使われるほか、主催する地方自治体などの一般会計に充当されます。
これは、客の射幸心(ギャンブルにお金を費やしてしまう心理)を利用して収益をあげているためであり、社会に還元するのが妥当であるためです。
パチンコはギャンブルとされておらずに民間企業が経営しているため、通常の企業と同様の税金を課されたのち、残りの収益は企業の手元に残ります。
パチンコ店の組合は社会貢献として収益の一部を還元していますが、これは金額ベースでは業界全体の粗収益の1000分の1未満です。
そのため、パチンコがギャンブルとされると、民間企業が経営しているという問題とともに、現状の税率の妥当性が問題となるのです。

さらに、ギャンブルとの位置付けにより、不正や脱税、ギャンブル依存症の問題が再び注目される危険性さえ帯びています。
そのため、上場を視野に入れている大企業を除いて、パチンコ店はたとえ黙認という形でも現状のほうが良いと考えて、合法化に否定的となるのです。


しかし、新世紀に入ってから、東京を震源として業界を震撼させる動きが起こりました。
次回は、カジノ合法化論議がパチンコにもたらした影響について論じます。

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