カジノとパチンコの論理学 民主党 遊技業に関する法律案6 日本遊技機型式検定機構の設立

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民主党 遊技業に関する法律案6 日本遊技機型式検定機構の設立

民主党の「娯楽産業健全育成研究会」(娯楽研)はパチンコ業界の規制緩和を目的とした、党所属国会議員による議員連盟です。
(詳しくはこちら 民主党のパチンコ換金合法化1 メンバーの名簿と目的
娯楽研は、パチンコ業界の所管を警察庁から経済産業省に移すこと等を盛り込んだ「遊技業に関する法律案」(パチンコ法案・遊技業法案)を取りまとめ、2011年の国会に提出する方針としています。
(詳しくはこちら 民主党 遊技業に関する法律案1 原案の概要とその背景

前回の記事において、娯楽研の目的のうち経済産業省に所管を移すことと同様に重視されて来た「型式検定」について、制度の概要と警察と業界の賭博性を巡る駆け引きの様子を記しました。
(詳しくはこちら 民主党 遊技業に関する法律案5 型式検定を巡る攻防
今回は、新たに設立された「日本遊技機型式検定機構」(検定機構・第二保通協)について、その設立の経緯と目的について論じていきます。


遊技機(パチンコ・パチスロ)の賭博性(射幸性)を審査する型式検定を巡っては、賭博性の上昇による売上拡大を狙うパチンコ業界側と、賭博性を下降させ不正改造事件や依存症などの社会問題を減らしたい警察側と、双方の思惑が真っ向から対立します。
新たに設置された検定機構は従来の警察主導の検定機関とは対照的に、パチンコ業界出身の人物が主導して設立したもので、この動きに連動した娯楽研の動きも随所に見ることが出来ます。


賭博性上昇の歴史

賭博産業は世界中の多くの先進国においては設置箇所数・設置台数が大幅に制限され、供給が需要を超えることの無いように配慮がなされています。
しかし、パチンコ業界は賭博ではなく遊技であるという建前を取っているため小学校などの保護対象施設近辺での開設が禁止されている程度で総量規制がなく、1店舗当たりの遊技機台数制限もありません。

パチンコ業界では従来から客単価の上昇による売上拡大のために賭博性の強い、すなわち当たりハマリの波の強い機種を要望し続け、行政側から譲歩を引き出し規制の穴を突くなどして一貫して賭博性を高めてきました。
パチンコの歴史を紐解くと、ときに業界の要望により極端に賭博性が上昇することがあり、社会問題がマスコミに取り上げられ、警察が強権を発動して以前より若干上昇した程度に抑えられる、この賭博性の揺り戻しが繰り返されてきました。
具体的に顕著な例を挙げても、古くは1950年代の連発式、80年代のフィーバー機、90年代のCR機、00年代の爆裂機など、枚挙に暇がありません。

賭博性の高い機種の登場を通じて、供給が需要を引っ張る形となり公営賭博から客を奪いながら市場を拡大し、00年頃からは参加人口の減少に伴う売上の減少を高い賭博性による客単価の上昇で補う形で市場規模を維持してきました。


爆裂機の検定取消

この中で登場したパチスロの爆裂機の賭博性は特に抜きんでていて、客が1日に換金額で百万円相当を超えるメダルを手にする例も出たため警察庁に問題視され、03年には一部の機種が異例の検定取消に至りました。
警察庁の規制強化はこれに留まらず蔓延する不正対策も鑑みて、遊技機の基準を定める風営法規則を改正して当時設置されていた全ての遊技機を総入れ替えする強硬策を採ります。
この際にパチスロの賭博性基準が大幅に厳格化され、この改正後の5号機は改正前の4号機とは対照的に売上増加に寄与しないため、パチンコ店側は導入に後ろ向きで入れ替えは思うように進みませんでした。
(※パチスロでは規則改正毎に○号機と番号を振る慣習があり、現在は5号機が普及しています)

4号機から5号機への入れ替えは04年から3年間の経過措置を通じて順次行われ、主力機種が次々と期限を迎えて店から撤去されるにつれて顧客数の低下を招きました。
これによりパチンコホールの倒産・閉店が相次ぎ、中には売上の低下を見越して廃業する店舗も現れ、業界では危機感が一気に高まりました。
業界内部では検定取消に至った機種について、風営法の抜け穴を突いたものとはいえ正規の型式検定を通過した手続きに落ち度は無いとの主張が広まり、警察庁が主導し保通協が独占している検定制度自体に対する反発が強まっていきます。


娯楽研と保通協

民主党の娯楽研では99年の設立以来、遊技機の検定試験を担う財団法人「保安電子通信技術協会」(保通協)の検定試験について問題視してきました。
保通協については従来より情報公開が足りない、検定料金が高い、試験時間が長い、検定受付けの枠が少ない、警察からの天下りが行われている等の問題が指摘され、業界内外から批判を受けてきました。
業界側からの要望も受けた娯楽研はこれらの問題を解決するため、「第二保通協」設置して独占を解消し保通協と競合させるべきとの主張を展開し、警察庁に圧力をかけていきます。

実際に00年4月、11月に娯楽研から国家公安委員長、警察庁生活安全局長に提出された提言書にはそれぞれ始めに保通協の検定の項目があり、これに基づいて行われた00年4月、01年11月の松崎公昭氏の国会質疑でも新たな検定機関を設置すべきとの主張が展開されています。
また、05年に発表した「遊技場経営の規制及び業務の適正化等に関する法律案」においても保通協以外の検定機関を認めて権限を分散化させるべきとの項目が盛り込まれ、07年6月の山田正彦氏の国会質疑でも同じ趣旨の質問がなされています。

10年6月に策定され11年の通常国会に提出される予定の「遊技業に関する法律案」では更に一歩進んで、警察庁傘下の保通協への検定機関の指定を解き経済産業省傘下として新たに設置する法人に移行させる旨の条文が盛り込まれ、第二保通協の必要性を強く示唆する内容になっています。

※詳しくはこちら 民主党のパチンコ換金合法化
 2 石井一会長と警察への圧力
 3 所属議員4人の国会質疑
 4 05年のパチンコ業法の内容
 5 山田正彦氏の国会質疑


日本遊技機型式検定機構の設立

一般社団法人の「日本遊技機型式検定機構」(検定機構)は、パチンコチェーン「玉越」会長(当時)の高木一夫氏の発案によるもので、保通協の独占している型式検定の一部を担う「第二保通協」となる目的で10年1月に設立されました。
同年の5月に、当時の中井洽国家公安委員長に試験機関の指定を受けるための申請書を直接提出し、10月15日に正式に受理されました。
検定機構には設立に向けて先頭に立ってきた高木氏が理事長に就任し、元警察庁関係者や保通協勤務経験のある人物らが理事に名を連ねています。

申請が警察庁に正式に受理されたことで、今後は受理の日付から半年以内に指定検定機関としての認可の可否を警察庁が判断することとなり、そこでは概ね許可される見通しです。
ただし、判断基準である「該当性」と「相当性」のうち、資金や設備などを基準とする該当性は問題ないものの、パチンコ業界関係者が中心となって設立したことで人事や利害関係を基準にする相当性には問題があると判断されことも考えられ、認可が下りない可能性も残っています。
これに対して、高木氏は自身が認可の障害になっている場合は理事長の職を辞する意向を示していますが、辞任によっても氏の影響力を払拭できるか否かは不透明です。


高木一夫氏と娯楽研

検定機構の理事長に就任した高木一夫氏は中部地方にパチンコチェーン店を展開する「玉越」の創業者・前会長で、同社はパチンコ・チェーンストア協会(PCSA)に名を連ねています。
PCSAは娯楽研が作成した05年と10年の2本の業界規制緩和のためのパチンコ法案に対して、業界団体の中で最も前向きに推進している団体です。
高木氏は検定機構の設立にあたって10年4月に玉越の会長を辞任し、パチンコ業界関連の役職からもすべて退いたことを表明しており、同社の経営権などは社長で同氏の夫人でもある高木和美氏に委譲されています。

高木氏は前農林水産大臣で娯楽研副会長の山田正彦氏とは個人的にも懇意であり、山田氏を顧問弁護士として同社に迎えていました。
高木氏と社長の和美氏、同社専務の3名は、07年6月の山田氏の国会質疑の直前の4月に「風営法施行規則の附則の改正を求めることに関する請願」を各1通づつ計3通、山田氏らを紹介議員として衆議院に提出しています。
この請願は5号機への交換についての3年間の経過措置の期限が切れる直前に行われたもので、1年間の期限延長を求めたものです。
これを受けた山田氏の国会質問では、請願の内容はもちろん他にも遊技機の交換に要した費用を国家賠償すべきとの主張や、保通協の問題、さらに三店方式を合法と認めるよう迫るなど娯楽研の従来の主張が多く盛り込まれました。

高木氏と法人としての玉越は政治献金にも熱心で、少なくとも民主党に対して08年6月に80万円、07年4月に60万円、娯楽研名誉会長の石井一氏にも09年5月と08年3月に各60万円、07年7月に300万円、山田氏にも09年3月に54万円の献金を行っています。


検定機構と遊技業法案

検定機構は現状の風営法に基づく「第二保通協」の役割を担う目的の他に、「遊技業に関する法律案」が国会を通過した際は保通協の替わりに検定機関を独占することも見据えたもので、保通協を追い込む為の大手飛車取りの役割が期待されています。

同時に、このパチンコ法案の条文に盛り込まれた第二保通協の役割を法案成立前に具現化することで、業界側からこの法案の国会通過を後押しする狙いもあると見られます。
さらに、与党第一党である民主党の娯楽研の動きと連動していることで警察庁の検定機関認可への圧力をも高め、国会の政局の混乱が悪化して法案提出が遅れても検定機構の認可だけは確実に実施させるようにしていると見るべきでしょう。


検定機構認可の効果

警察庁による検定機構の指定検定機関としての認可の可否の判断で、認可が下りた場合は現行の風営法下においてもパチンコ業界に大きな変化をもたらします。
検定機構は当面は保通協が担っている検定業務の内1割から2割程度を担当するという旨を表明していますが、保通協の行う残りの検定全体にも大きな影響を及ぼすことになります。

まずメリットとして、検定機構の記者会見でも謳われた検定料金の定額化、検定期間の短縮化が進み、さらに検定項目も簡素化される方向に向かうでしょう。
また保通協での情報公開を後押しし、パチンコ・パチスロメーカーの開発の自由度が広がることになります。
その反面でデメリットとして、検定機構のみならず保通協の検定についても予算・時間の制約が強くなり、検定の精度が全体的に劣化することになります。
ちょうど05年に発覚した耐震偽装問題の構図と重なる形となり、地震で倒壊する可能性の高い建築物が検査を通過したように、社会問題を引き起こす恐れの強い賭博性の高い遊技機が検定を通過し易くなるでしょう。

情報公開が進むことにより保通協の裁量が制約され、風営法の穴を突いた新たな問題に柔軟に対処することが出来なくなり、結果として問題の多い賭博性の高い遊技機が検定を通過し易くなります。
高い売り上げが見込める法令上の違法ぎりぎりの遊技機は基準を元に杓子定規の試験を行う検定機構に持ち込まれることとなり、警察庁の保通協への影響力も逓減して不正や依存症などの社会問題は現在よりも悪化することになるでしょう。

さらに娯楽研のパチンコ法案が国会を通過して検定機構が唯一の検定機関となった場合は、賭博性を問題視する警察庁の制約からパチンコ業界が完全に解放されることになります。



以上のように、民主党娯楽研の「遊技業に関する法律案」と「日本遊技機型式検定機構」は、密接に絡みながらパチンコ業界の規制緩和に向けて進められていますが、現在の政局は混迷を極めています。

次回は、菅政権や与野党で今後カジノ法案・パチンコ法案と関わっていく可能性のある人物について改めて分析し、2011年のカジノ・パチンコ法案がどのように推移していくかを予測します。
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テーマ : カジノとパチンコ
ジャンル : 政治・経済

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ついに結果が出ましたね。

場口さまこんにちは、お久しぶりです。
第二保通協の申請が不許可になったみたいですね。
震災が起きてから、
カジノやパチンコのことは完全にストップしていたような中で、
この件だけは期限つきだったためか、半年ギリギリで来ましたね。
「じゃん球」という新しいタイプ?の遊技機も出てきそうな気配ですし、
相変わらず。表面上は何も起きていないようで、
水面下ではじわじわ色々なものが動いているのでしょうか…

Re: ついに結果が出ましたね。

紅茶さま

お久しぶりです。コメントを寄せていただきありがとうございます。

第二保通協については今回は許可が下りませんでしたが、
理事長交代も発表されたので、再度申請する可能性はまだ十分高いと言えます。

雀球は古くからある種別の一つで、
04年の規則改正の影響で撤去された後は、ほとんど姿を消したようです。

震災の影響はやはり大きいですが、法案の動きも出始めてきましたね。

諸般の事情によりブログの更新が滞っております。
取り掛かっているものもありますので、気長にお待ちいただければ幸いです。
プロフィール

場口 重

Author:場口 重

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